二軍の価値2005/4/27up

 日本プロ野球の二軍(以下「二軍」で統一)は、はたしてどれだけ機能しているのだろうか? アメリカでは大リーグの下に3A、2A、1Aと手厚い育成システムが用意されている。並の選手なら、3Aに上がることすら容易ではない。メジャーに昇格するには、並々ならぬ努力が必要とされる。

 しかるに二軍はどうだろう? ちょっと努力すればすぐにレギュラーになれる。あるいは、故障者が続出すれば出番が転がり込んでくる。現在は1球団が保有できる選手はどんなに多くても70人までという規定がある。一軍に28人がおり、故障者が平均して10人くらいいると仮定すれば、残りは32人。さらに基礎体力作りをしているルーキーなどは試合に出ないから、結局二十数人の中から9つの椅子を争うことになる。その椅子に座れなかった者も、大半はベンチ入りできるだろう。

 つまり、二軍には競争原理というものが存在しないに等しいのである。ちょっと二軍で頑張れば一軍に呼んでもらえるのである。一軍で活躍するのはたしかに難しいが、一軍に上がることだけなら無茶苦茶厳しいというものではない。「最近の選手にはハングリー精神がない」といった批判があるが、こういう状況では致し方がないのだ。

 最近は大学や社会人チームの練習設備が非常に充実している。高卒でプロ入りすることを避け、そういった道を経てからプロ入りする選手が増えているのはこのためだろう。もし二軍がきちんと育成の機能を果たしているなら、一刻も早くプロ入りしたがる選手がもっと多いのではないだろうか?

 さらに、1球団70人という枠があるため、高卒の選手が開花するのを待っていられないという事情がある。高卒の選手が一軍のレベルに達するには、平均して5年ほどかかる。しかし、球団の事情で3年くらいで解雇されてしまうケースも多い。これでは高校生が寄りつかないのも頷ける。現に、昨夏甲子園を沸かせた駒大苫小牧(北海道)の選手は、誰一人プロ志望届を出さなかったそうだ。実力がないのではない。キャプテンだった佐々木孝介選手は、駒大で5番遊撃のレギュラーを確保したが、1年春に同大で遊撃のスタメンに座ったのは野村謙二郎(現広島)以来だそうだ。プロ入りしていれば、1年目から一軍に昇格できた可能性も十分あるのだが…。

 その結果、大学・社会人の即戦力に依存する度合いが高くなる。契約金などがたくさん必要になり、経営を圧迫する。ヘタすれば、また合併話が持ち上がりかねない。ネガティブすぎるかもしれないが、いずれにせよあまりいいことでないのは確かである。

 ではどうすべきか。これは以前書いた70人枠のコラムともリンクするが、やはり70人枠を撤廃することである。才能のある選手なら100人でも150人でも雇えばいい。そうすれば一軍に上がる前に二軍で競争に勝つ必要が生まれる。高級車を乗り回して183キロ出している余裕などなくなる。二軍とはいえ、有望な選手が大勢いる中を勝ち残った選手には本当の実力がつくし、自信が生まれる。

 欲を言えば、三軍も欲しい。三軍を勝ち抜き、二軍での競争にもまれて一軍に上がった選手は、きっとハングリー精神が旺盛だろう。現在のプロ野球は即戦力選手があまりに台頭しすぎている。投手が足りないから大卒の即戦力投手に期待するというのでは、いったい何のための二軍なのか。もし70人枠が撤廃されれば、入団即レギュラーという選手はきっと大幅に減る。でも、それこそが本来あるべき姿ではないだろうか? 即戦力に依存する割合が高いから、裏金が横行してしまうのである。大学・社会人のスターが簡単に活躍できないくらいプロの選手層を厚くしてほしい。

 アメリカでは、メジャーと3Aなどが別々の都市を本拠地とするチームが多い。日本でもそういうシステムを導入できないだろうか? 例えば一軍が仙台、二軍は盛岡、三軍は水戸とか。プロ野球の本拠地がない都道府県は、二軍や三軍といえども本拠地を置いてくれれば大歓迎してくれる。そしてこれが野球の普及にもつながる。まだまだ野球ファンが増える要素はあるのだ。

 J2のアルビレックス新潟は、サポーターの熱烈な後押しもあってJ1に昇格した。JFLのザスパ草津は、大半のチームが平均観客数が3ケタである中で平均5千人近くもの観客を集め、こちらもJ2に昇格した。アメリカの3Aでも万単位の観客を動員するチームがある。そういう盛り上がりが日本プロ野球界でも期待できるかもしれない。