いったい日本野球のコミッショナーは何をやっているのだろうか。コミッショナーが日本球界のためになることをやったという話は、最近全くと言っていいほど聞かない。ダイエーが近鉄のローズを、王監督の記録を守るために敬遠したときには、
「フェアプレーを至上の価値とする野球の本質からまったく外れている。そのような野球がファンに支持されるとは到底思えない。ファンの前で堂々と胸を張れる試合をすることを強く望む」
と、異例の「声明」を発表した。このごく当然のことが「異例」と呼ばれること自体がおかしいのである。つまり、コミッショナーは何の役にも立っていないと言っても過言ではない。
そもそも、コミッショナーは野球を知っているのだろうか? それは普通の野球ファンくらいの知識はあるだろうが、プロ野球を統括する責任者としては実に情けない経歴の持ち主ばかり。というのも、川島現コミッショナーと吉国前コミッショナーは、ともに官僚出身者。その前の数人のコミッショナーも、元最高裁判事や銀行の会長、大学の学長だったりする。トップとしての実績はたしかに十分だが、野球を知らない人たちにいったい何ができるのだろうか? サッカーの名監督を引っ張ってきて野球の監督にするようなものではないだろうか?
1人だけ、素晴らしい実績を残したコミッショナーがいるので紹介しよう。79年から85年までコミッショナーを務めた、下田武三氏だ。下田氏は最高裁判事の出身ながら、プロ野球に偉大な貢献をしたと言ってもいい。それは大げさだとしても、少なくとも、その他の能無しコミッショナーよりは絶対に良かった。
飛ぶボールや圧縮バットの使用を禁止し、球場の規格も定めた。また、試合時間の短縮のために乱数表(サインを読まれないようにするもの)の使用を禁じた。さらに、日本の球場の応援はうるさすぎるとして、応援にも制限を加えた。82年に阪神の柴田・島野両コーチが審判に殴る蹴るの暴行を加えたとき、下田コミッショナーは無期限出場停止という断固とした処置を行った(ただし半年後に処分は撤回され、島野は星野の腹心として中日・阪神でコーチを務めている…)。いずれも、プロ野球をより良くするものであった。
ところが、オーナーたちにはあまり評判が良くなかったそうだ。理由は簡単、「球団の利益にならない」からである。その後はオーナーたち(特にナベツネ)の言いなりになるような無意味なオーナーが立てられるようになった。ナベツネはもちろん、その他のオーナーたちも、プロ野球を良くすることより自らの利益を追求することばかりに目が行っている。コミッショナーはコミッショナーで、少しでも長くその地位にいたいためにオーナーたち(特にナベツネ)の言いなり。これではどうしようもない。コミッショナーより、明らかにナベツネのほうが発言力が強い。
メジャーリーグのコミッショナーは、色々な改革を行っている。コミッショナーが誕生した約80年前には、裁判で無罪判決が出た八百長疑惑で選手数名を永久追放処分にしている。「疑わしきは罰する」英断であった。これで腐りかけていたメジャーは救われた。2002年にはコミッショナーの裁定によってオールスターが史上初の引き分けとなった。これには批判も続出したが、要するにコミッショナーに権限があるということである。
ナベツネ主導のプロ野球界には未来はあるまい。形骸化したオーナー会議も見苦しい。とはいえ、ナベツネが目を覚ます可能性はゼロに近い。他のコミッショナーがナベツネの言いなりにならない、強い姿勢が必要なのだ。巨人の人気にあやかろう、という心がいけない。
コミッショナーは、選手出身が望ましい。現役の選手で言えば、ヤクルトの古田や巨人の桑田など、私心のない人物が適任か。むろん彼らが自分の出身球団に有利になる改革を推し進める可能性がないとは言えないから、コミッショナーの下に数人の理事を置けばよかろうか。とにかく、現役選手として苦労した人物にコミッショナーを任せたいものだ。